第28回2016年度本会議 概要
今年の本会議では、社会班、文化班、政治班、経済班の4つの分野に分かれて、それぞれのテーマについて議論を行うことをメイン活動としました。また、日露共同宣言60周年を記念して、外交シュミュレーションを実施。その他、茶道などの日本の文化体験、ロシアに進出している日本企業への表敬訪問などを行いました。
期間 8月2~23日
参加メンバー 日本人 15人
ロシア人 16人(ウラジオストクとハバロフスクから来日)
各分科会の概要について
社会班
老後の生活を中心とした社会問題について、「雇用」「退職後の生活」「年金」「コミュニティ」「犯罪」といった切り口から議論をしました。これらの問題について話し合う中で、日本とロシアとの共通点及び相違点の双方が浮き彫りになりました。例えば、日本では高齢化に伴い老老介護などの問題が、俎上に上がっていますが、ロシアにおいては老人ホームの不足を筆頭とする環境面の整備における問題が生じています。また、日本においては年金給付の世代間格差が激しいことが社会問題となっていますが、ロシアではそもそも年金給付額が十分ではないということが指摘されました。
文化班
分科会の文化班では、日本とロシアの間における観光について議論しました。ここでは日本は東京、ロシアは日本から地理的に近い極東のケースを考えました。日露間での観光客の移動は、ロシアから5万人、日本からは10万人ほどです。両国間の観光客を阻む要因としては、日本にとってはビザ取得やキリル文字だけの表示、ロシア側にとっては高い物価や公衆無線LANの不備などが挙げられました。また、日本人の極東地域に対する観光地としての認識が低く、例えばウラジオストクではカジノやエコツーリズムなどが楽しめるといったことが認知されていません。両国の観光促進のためには、お互いの魅力を発信しあうことも重要なのです。
経済班
分科会の経済班では、自動車産業における日本とロシアの共同事業について議論を深めました。まずロシアと日本のGDP等のデータや、すでにロシアに進出している日本企業の例、LNG分野における日ロ共同事業の例などの情報をお互いに共有しました。そして現地法人設立の手続きや税制など、実際に事業を行うにあたって障壁となる制度に関しても話し合いました。また、ロシアでは日本の中古車が人気な一方、ロシア政府は日本などから技術を吸収して国産化を図りたいと考えていることもわかりました。
両国の関係を緊密にしていくことが、自動車産業だけでなくエネルギー産業や福祉分野等においても協力を進めるために必要だという結論に至りました。
政治班
2016年では北方領土問題をめぐる日露の政治的、経済的関係に注目が高まりました。そこで、政治班では両国にとって北方領土とは歴史的、政治的にどのように認識されているのかを共有し、今後、北方領土問題がどのように進展する可能性があるかについて議論を行いました。豊富な知識と柔軟でありながら現実に即して考えていく必要があったため、議論は大変な苦労を強いられました。
話し合いでは、両国のこの問題に対する歴史的、政治的認識の乖離が大きいことを痛感すると同時に、この問題が大体の分野における日露関係の最大の障壁となっている深刻さを共有しました。両国が折り合いを付けるには数十年単位の時間と、米ロの対立構造が解消される必要があるという結論に達しました。専門的で取り上げにくい話題でしたが、両国の学生がさらなる日露関係改善を望む気持ちを、素直に共有することができたと思います。
外交シュミュレーションについて
日露間の文化交流は近年盛んになっていますが、経済的交流に関しては及び腰の姿勢が多く見受けられます。そこで、学生の立場から経済交流、特に貿易分野での当事者的な経験を企画しました。つまり、FTA交渉に関する外交シュミュレーションの実施です。自動車の輸出入の議論では、貿易促進を第一に掲げる日本側と、国内産業育成を優先させるロシア側との間に認識の錯語が見られました。しかしながら、鉄鋼や石油に関してはお互いに意味のある売り手と買い手であるという相互関係から、スムーズに交渉が進みました。また、野菜の貿易ついての議論では、高級食材の売り手という日本の新たな可能性を見出すことが出来ました。このシュミュレーションは、日本側とロシア側との相互理解を深めるだけでなく、国の将来の方向性を熟慮する良い機会となりました。
その他活動
上記の活動以外に、茶道等の日本文化体験、新潟市役所、在日ロシア大使館への表敬訪問、ロシアへ企業進出している株式会社タニタの見学、環日本経済研究所での勉強会、都内観光などを行った。
・顧問
廣瀬徹也 元在ウラジオストク総領事
日本・ウラジオストク協会名誉会長
アジア・太平洋国会議員連合中央事務局事務総長
・講演団体
日本国外務省
社団法人 日本外交協会
日露青年交流センター
日本対外文化協会
ロシア連邦大使館